「納品したのに、検収もされず放置されている」「いったん受け取ったはずの成果物を、返すと言われた」。発注者側の事情で仕事が宙に浮くと、報酬の支払いも止まってしまいます。この記事では、フリーランス新法第5条第1項が禁止している「受領拒否」と「返品」を、条文の要旨に沿って整理し、手元で確認できることと記録の残し方をまとめます。
1. 条文は何を定めているか
第5条第1項は、発注者(特定業務委託事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に業務委託をした場合に、してはならない行為を並べています。そのうち一つ目が「給付の受領を拒むこと」、三つ目が「給付に係る物を引き取らせること」です[1]。原文の該当部分は次のとおりです。
特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うものに限る。)をした場合は、次に掲げる行為をしてはならない。一 …給付の受領を拒むこと。…三 …給付に係る物を引き取らせること。
平易に言い換えると、次のとおりです。
| 禁止される行為 | 何が | 具体的なイメージ |
|---|---|---|
| 受領拒否 | 約束した給付(納品物)を受け取らない | 納期に納品したのに「受け取れない」と言われ続ける |
| 返品(引き取らせること) | 受け取った物を引き取らせる | いったん受け取った制作物を、後から送り返される |
どちらも、フリーランス側に責任がないのに行われる場合が問題になります(この限定の正確な文言と範囲は、公式の資料で確認してください[2])。成果物に明らかな不備があるなど、フリーランス側の事情がある場合の扱いを、この記事では断定しません。
2. 誰の、どんな取引が対象になるか
- 期間の条件がある。第5条の禁止行為は、業務委託の期間が政令で定める期間以上のものが対象で、施行令第1条は「1か月」と定めています[3]。数日で終わる単発の取引は、この条文の対象外になる場合があります。
- 物品や成果物の受け渡しが前提の行為。台帳に整理された条文の要旨では、役務(サービスの提供)の委託では「受領拒否」と「返品」は対象から除かれています[1]。たとえば、納品物のあるデザインや原稿、プログラムなどの制作は当てはまる可能性がある一方、作業そのものを提供するタイプの委託は別に確認が必要です。
- 相手が特定業務委託事業者であること。発注者の側にも要件があります。自分の取引が対象かどうかは、「特定受託事業者」の判定とあわせて見直してください。
3. 受け取ってもらえないとき、手元でできること
- 納品した事実を記録する。納品した日時、方法(メール・チャット・クラウドへのアップロードなど)、納品した内容を、日付つきで保存しておく。
- 受領されない理由を文面で確認する。「何が足りないのか」「いつまでに何をすればよいか」を、メールなど残る形で尋ねる。口頭だけで済ませない。
- 取引条件を見返す。給付の内容・検収の定め・報酬の額・支払期日が最初にどう示されていたかを確認する[4]。
- 支払期日の考え方を押さえる。支払期日は、給付を受領した日から60日以内で定めるのが原則です[5]。受領されないまま時間が過ぎる状況は、日数の数え方にも影響し得るため、記録が重要になります。
- 解決しないときは相談する。公式の相談窓口や、違反の事実があるときの申出制度(第17条)を調べる[2][6]。
確認の文面は、事実と質問だけを書くと角が立ちにくくなります(あくまで一例です)。
4. 記録と確認のチェックリスト
- □ 納品した日時・方法・内容を、日付がわかる形で保存した
- □ 受領されない(または返品された)理由を、文面で尋ねた
- □ 取引条件(給付の内容・報酬・支払期日)の最初の明示を見返した[4]
- □ 業務委託の期間が1か月以上かを確認した[3]
- □ 納品物のある委託か、役務の提供かを整理した[1]
- □ 支払期日が受領日から60日以内になっているか確かめた[5]
- □ 解決しないときの相談先・申出制度を調べた[2][6]
ほかの禁止行為(報酬の減額、買いたたきなど)は禁止行為とは?、督促しても払われないときは次にできることで整理しています。
5. 受領が遅れると、入金も遅れる
支払期日は受領を起点に考えるため、受領が先送りされると入金の見通しも立てにくくなります。入金までの期間が長くなる時期に備えて、請求書の支払いを早められるサービスを選択肢に入れておく方法もあります。
こうしたサービスには利用条件・手数料・審査があります。申し込む前に必ず公式サイトで最新の内容を確認してください(本記事ではサービスの条件や手数料を評価・断定していません)。入金日の見通しは入金サイクル・手元資金チェッカーでも確認できます。
まとめ
フリーランス新法第5条第1項は、1か月以上の業務委託で、発注者が給付の受領を拒むことや、給付に係る物を引き取らせること(返品)を禁止しています[1][3]。まずは納品の記録を残し、受領されない理由を文面で確認し、取引条件と支払期日を見返す、という順に進めてみてください。自分の取引が対象かどうか迷うときは、公式の相談窓口を活用してください。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第5条(禁止行為) — e-Gov 法令検索
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)」 — 公正取引委員会/厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」 — 厚生労働省
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第1条 — e-Gov 法令検索
- 同法第3条(取引条件の明示) — e-Gov 法令検索
- 同法第4条(報酬の支払期日等) — e-Gov 法令検索
- 同法第17条(申出等) — e-Gov 法令検索
本文の説明は上記の条文・案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。