納品したあとで「ここも直してほしい」「前提が変わったのでやり直して」と言われた経験は、フリーランスなら一度はあるはずです。フリーランス法には、発注者の都合による不当な「給付内容の変更」「やり直し」を禁止する規定があります。この記事では、どの修正依頼が相談の対象になりうるかを仕分けするための見方と、記録の残し方を整理します。
先に結論
- 修正を断れるかは、まず当初に明示された「給付の内容」(範囲・修正回数)の内か外かで分けます。内なら契約上の対応、外なら追加条件を相談する話です。
- フリーランス側に責任がないのに、発注者の都合で内容を変えさせる、または受領後にやり直しをさせて利益を不当に害することは、1か月以上の業務委託で第5条第2項の禁止行為の対象になりえます[1][2]。
- 線引きは個別の事情で決まります。依頼の日付・内容・理由をメールで残すことが最初の一手です。
よくある疑問
Q. 納品後の追加修正は、無償で応じなければいけませんか?
条文は「無償」かどうかではなく、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させ、または受領後にやり直しをさせて利益を不当に害することを禁じています[1]。当初の仕様どおりでない部分の直しは契約上の対応、範囲外の追加は費用・納期を相談する、と分けて考えます(下の仕分け表)。
Q. 1か月未満の単発の仕事でも、やり直しの禁止は使えますか?
第5条の対象は、施行令第1条により1か月以上の業務委託です[2]。1か月未満の場合は第5条の対象外となる可能性があるため、契約書・発注メールの定めを確認します(対象・保護範囲チェッカー)。
Q. 修正回数の取り決めがなかったときは?
第3条は、給付の内容などを業務委託をしたら直ちに明示するよう定めています[1]。回数の記載がなければ、いつ・何を頼まれたかの記録を残し、範囲の確認を書面で求めます。同じ論点を条文順に整理した無償の修正・やり直しを求められたらも参考になります。
1. 原文の確認
- 第5条(禁止行為):政令で定める期間以上の業務委託では、発注者(特定業務委託事業者)は、フリーランスの責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させ、または受領後にやり直しをさせて、フリーランスの利益を不当に害してはならないとされています。第2項には、このほか金銭・役務などの利益提供の要請も並んでいます[1]。
- 対象になる期間:第5条の「政令で定める期間」は、施行令第1条により「1か月」です[2]。
- 第3条(取引条件の明示):給付の内容、報酬の額、支払期日などは、業務委託をしたら直ちに書面またはメール等で明示される必要があります[1]。
上は条文の要約です。「不当に」に当たるかどうかの具体的な当てはめは、公正取引委員会などの公的機関の案内で確認してください[3]。
2. 平易な言い換え:何が・誰に・どうなる
- 誰が守る側か:業務を発注する側(特定業務委託事業者)です。
- 誰が守られる側か:従業員を使わない個人・代表者1人だけの法人など(特定受託事業者)です[1]。
- 何が問題になりうるか:フリーランス側に落ち度がないのに、発注者の都合で仕事の内容を変えさせられる、または納品後にやり直しを求められる。そのやり直しの費用を負担せず、フリーランスの利益を不当に害するような場合です。
- いつから:業務委託の期間が1か月以上のとき。1か月未満の取引は、この規定の対象外です[2]。
すべての修正依頼が違反になるわけではありません。当初の仕様どおりに仕上がっていない部分の直しは、通常の契約上の対応の話です。ここで問題にしているのは、当初の取り決めの外に出る変更や、フリーランスに責任のないやり直しです。
3. 具体例:修正依頼の仕分け表
| 依頼の内容 | まず確認すること | 動き方の例 |
|---|---|---|
| 仕様書どおりでない箇所の直し | 明示された「給付の内容」と食い違っているか | 契約の範囲内の対応として直す。やり取りは保存する |
| 最初の指示になかった内容の追加 | 明示された範囲の外か | 範囲外であることを書面で伝え、追加の条件(費用・納期)を確認する |
| 発注者側の方針変更によるやり直し | フリーランスの責めに帰すべき事由があるか | 変更の経緯と日付を記録し、費用負担を相談する |
| 納品後しばらくたってからの全面やり直し | 受領の日付と、やり直しの理由 | 受領の記録を示し、条件を明確にしてから対応する |
表は整理のための一例で、個別の事案が違反に当たるかを判定するものではありません。
記録メモの例文
範囲外と思われる依頼を受けたときは、感情的にならず、事実だけを書いて送り、返信を保存しておきます。
- 「○月○日付の発注内容(○○の制作・修正○回まで)に対し、今回のご依頼は○○の追加にあたると理解しています。対応する場合の費用と納期をご相談させてください。」
- 「前提条件が変更されたため、すでに納品した○○の作り直しが必要になると認識しています。作業範囲と費用の扱いについて、書面(メール)でご確認いただけますか。」
4. チェックリスト
- □ 発注時に明示された「給付の内容」(範囲・回数)を保存してある
- □ 依頼が、その範囲の内か外かを書き出した
- □ 取引の期間が1か月以上か確かめた(対象・保護範囲チェッカー)
- □ 修正依頼の日付・内容・理由を、メール等で残した
- □ 受領(納品)の日付を記録した
- □ 解決しないときの相談先(申出制度の流れ)を確認した
5. やり直しで入金が遅れるときの備えもあわせて
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まとめ
修正依頼は、「当初の範囲内の直し」と「範囲外の変更・フリーランスに責任のないやり直し」に分けて考えます。1か月以上の業務委託では、後者が第5条の禁止行為の対象になりえます。まずは明示された内容と依頼の日付を記録に残し、判断に迷う場合は公的な窓口や弁護士などの専門家にご確認ください。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第3条・第5条 — e-Gov 法令検索
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第1条 — e-Gov 法令検索
- 公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)」 — 公正取引委員会
本文の説明は上記の条文・公的機関の案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。