取引先とのやり取りの中で、性的な言動や、人格を否定するような叱責、育児・介護への配慮を欠く発言などに困った経験はないでしょうか。フリーランスは会社員と違い、社内の相談窓口やハラスメント規程がない状態で発注者と直接向き合うことが多く、誰に相談すればよいか分からず一人で抱え込んでしまいがちです。この記事では、フリーランス新法が発注事業者に課す「ハラスメント対策」義務の内容と、実際に困ったときにできることを解説します。
フリーランス新法の「ハラスメント対策」義務とは
フリーランス新法第14条では、特定業務委託事業者(フリーランスに業務委託をする発注事業者のうち一定の要件を満たす者)は、セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメント・パワーハラスメントに当たる言動によってフリーランスの就業環境が害されないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないとされています[1]。原文では「その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない」と定められており、平易に言えば「発注者は、フリーランスからのハラスメント相談を受け付ける仕組みを用意しておく義務がある」ということです。
相談したことを理由にした不利益取扱いも禁止される
相談窓口があっても、「相談したら契約を切られるかもしれない」と思うと使いづらくなります。フリーランス新法では、ハラスメントについて相談したことを理由に、契約解除など不利益な取扱いをしてはならないという保護もあわせて定められています[1]。相談すること自体を理由に不利な扱いを受けることは、この規定に反する可能性があるということです。
実際に困ったときにできること(チェックリスト)
- 言動があった日時・場所・具体的な内容・同席者を、その都度メモや記録(チャット・メールのスクリーンショット等)に残しておく
- 発注事業者に相談窓口や担当者があるか確認し、あればまず社内の窓口に相談してみる
- 発注事業者に相談窓口がない、または相談しても改善がない場合は、フリーランス・トラブル110番や厚生労働省の相談窓口を利用する[2]
- 相談したことを理由に契約解除など不利な扱いを受けた場合は、フリーランス新法違反の疑いがあるものとして、厚生労働大臣への「申出」制度の利用も検討できる[3]
記録を残しておくことは、社内窓口や外部の相談窓口に事実関係を伝える際にも役立ちます。取引条件そのものが曖昧なままだと、何が「約束と違う対応」なのかの線引きも難しくなるため、業務委託の内容や条件を書面で残しておくことも合わせておすすめします。
まとめ
フリーランス新法は、発注事業者に対してハラスメント相談を受け付ける体制の整備と、相談したことを理由にした不利益取扱いの禁止を義務付けています。一人で抱え込まず、まずは記録を残し、社内・社外の相談窓口を使うところから始めてみてください。相談してもなお不利な扱いが続くようであれば、「申出」制度の利用も選択肢になります。
出典(一次資料)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第14条(ハラスメント対策) — e-Gov 法令検索
- 厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」 — 厚生労働省
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第17条(申出等) — e-Gov 法令検索
本文の説明は上記の条文・案内を分かりやすく言い換えたものです。制度は改正されることがあるため、最終的な判断は原文をご確認ください(参照日: 2026-09-25)。